頸部細胞診
子宮頸部をへらやブラシで擦って細胞を取り、顕微鏡で細胞の形態の異常を調べる検査です。
膣に器械をかけて頸部を展開するため多少の圧迫感はありますが、細胞採取の痛みはほとんどなく、時間もかからずに検査ができて、多少の出血は伴うものの検査による合併症はほぼないため、子宮頸がん検診(スクリーニング検査)や異形成の経過観察(フォローアップ検査)に使用されています。
有効な検査方法ではありますが、きちんと適切な場所から採取できているか、細胞の採取器具が正しく選択されているか、標本が乾燥などでダメージを受けていないかなど、抑えるポイントがいくつかあり、正確な診断のために正しい手順で検査を行う必要があります。
子宮頸部細胞診の結果について
細胞診の判定は細胞診に問題がなければNILMと表記されます。NILM以外は異常細胞診の結果となります。頸がん検診でNILM以外のコメントがついた場合はすべて精密検査の対象となります。ASC-US以外の結果(LSIL、HSIL、ASC-H、SCC、AGCなど)は、コルポ診を用いた組織診を行う(コルポ下生検と呼ばれる)精密検査が必要となります。ASC-USの結果の場合はコルポ下生検を行うかどうかの判断のために、ハイリスクHPVの感染が陽性か陰性かを調べる精密検査を行います。ASC-USでハイリスクHPVが陽性ならコルポ下生検へと進みます。
子宮頸部の精密検査
①コルポスコピー検査
コルポスコピー検査は、コルポスコープという拡大鏡を使って子宮の頸部を観察する検査でコルポ診とも言われます。子宮頸癌検診で異常を指摘された方を中心に行われます。
通常の内診のように膣に膣鏡をかけたあと、コルポスコープを通して膣内や頸部を拡大しながら肉眼ではわかりにくい所見を観察します。膣内のおりものを拭きとって、観察しやすいようにお酢で加工をします。お酢が多少染みる場合もありますが、加工の時間は約30秒ぐらいです。お酢により正常な部分と病変部分がはっきりしてきます。要所要所で頸部の写真を撮ります(2~3枚)。
②頸部組織診
(クリックで拡大画像が開きます)
コルポスコープでの観察時には病変部分の診断のために、組織診とよばれる検査を行うことが一般的です。組織診は異常を疑う部分を専用の器具(生検鉗子)を使って数ミリ大の大きさの頸部組織を切り取って病理診断(顕微鏡での診断)を行う検査のことです。コルポ診でお酢の加工を行い病変がはっきりしたところで、2-3個の組織を取り(この操作をコルポ下生検といいます)、病理検査に提出します。ばらばらな細胞を評価する細胞診よりも、細胞同士のつながりなどの情報量が増えます。
生検を行うときの痛みの感じ方は個人差がありますが、大抵の方は許容範囲内のようです(まれに横になって休むのが必要になる方もいらっしゃいます)。組織を採取したあとは、止血のタンポンを1-2個挿入して検査終了となります。精密検査(コルポ下生検)にかかる所要時間は5分ぐらいです。検査後4-5時間でタンポンを抜いていただきます。1-2日間は出血が持続することが一般的ですが、大体は2-3日で落ち着きます。数日しても月経2日目を超えるような出血量の場合は確認の診察が必要になります。
組織診の結果によって、治療を勧める状態なのかを判断します。精密検査を受けられる多くの方が前がん病変の異形成の状態ですが、初期段階の異形成(軽度異形成(CIN1)/中等度異形成(CIN2))ほど自然に病変が消失しやすく、経過観察をしながら病変消失を待ちます。異形成の中でもがんに近い高度異形成/上皮内がん(CIN3)は、がん化を予防する目的で病変切除の手術をお勧めする方針となります。
③HPVタイピング検査
HPVの中で子宮頸がんになりやすい代表的なタイプの13種類(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68型)への感染を個別に判定する検査です。HPVのタイプによって子宮頸がんへの進展リスクが異なるため、リスクに応じた管理をするために、頸部の組織診でCIN1、CIN2と診断された方に検査が行われます。CIN3の診断はHPVのタイプによらず治療の方針となりますので、タイピング検査の対象となりません。検査の結果をふまえて、フォローアップの間隔や検査方法が決定されます。
検査の方法は頸部細胞診と同じく、へらやブラシで頸部を数回擦って検体採取をするため、ほとんど苦痛なく短時間で終わります。
当院では頸部異形成の診断やフォローアップに特化した専門的診療を行っています。各々の検査の方法には長所・短所があり、それぞれの検査の結果にばらつきが出ることもしばしばあります。
当院では、コルポ診の所見・細胞診の所見・組織診の所見を総合的に判断するため、病理結果のレポートのみで判断せず、細胞診・組織診の標本を全例鏡検して再度確認しております。また、病理診断をしてくださる専門医と連携をはかり情報交換しながら、正しい判断のための取り組みを行っています。